錬金術師をしていた話

おおむねノンフィクションで、失敗談です。 錬金術ことはじめ 金融の世界では、相場で勝ち続ける方法のことを「聖杯」と呼ぶ。 およそ3年ほど前の話になるが、そのころのぼくは大学院の修士課程で研究をする傍ら、錬金術師をしていた。同じ境遇の多くの人に…

小さなインターネットと、大きなインターネットのこと

先日、いつものように漫然とインターネットをしていると(漫然とインターネットをするのはよくない)、興味深い投稿を見かけた。詳細は忘れたが、何か論議を呼ぶツイートがバズっていて、その投稿を開いてみるとツイートの投稿者が(比較的初期に)リツイー…

分岐する物語:「アンチ・選択肢」の試み

以前、ゲームにおける選択肢というものがもつ性質や、ある種の禁止事項について書いた。 xcloche.hateblo.jp 簡単に要約すると、この昔公開した記事で書いているのは遡及的な選択肢(その選択肢をとることで、選択肢以前に決まっていたはずのものごとが変化…

この記事にはこんなことが書かれています

面白そうなタイトルに惹かれて記事を読みにいくと、ぜんぜんそのタイトルのことを書いていない━━あるいは、タイトルの問題提起が記事内でまったく解決されていない━━そういう事例に本当によく当たって、「また騙された〜」となることが多い。 実際の内容とは…

ぼんくら大学生体験の記録

今年で都合10年ほど学生をしていた京都を去るので、大学や日常生活で体験した、ぼんくら大学生体験を記録としてまとめておこうと思う。ずいぶん昔の学部時代の話で、多少の記憶の変質による脚色はあるかもしれないが、努めて誇張抜きに書く(少し盛るに留め…

テキストベース・オタクの末路の話

誤読 すこし前に友人と話していたとき、なんの話題の流れだったか声優・上坂すみれの話が出た。口火を切ったのは友人のほうで、「うえさかすみれの〇〇が~」みたいな感じでとりとめのない内容の話がはじまった(覚えてない)のだが、このときぼくは内心焦っ…

現代地質学講義

かぐやSFコンテスト 以下の文章は、第1回かぐやSFコンテスト(「未来の学校」をテーマとしたショートショートの創作コンテスト)にコッソリ出品していた作品です。嬉しいことにHonorable Mention (選外佳作)に名前をあげていただいたようです。せっかくな…

足をぶらぶらさせること

VR

もうひとつの身長 ぼくの(リアルアバターの)身長はだいたい平均よりちょびっとだけ高いといった程度だが、ヴァーチャルな空間では130~140cm程度の低身長のアバターをよく使っている。といってもこの身長はVRChat内ではそんなに低いわけではなく、平均か、…

(セルフ)タイトル回収の話

タイトル回収 演出技法として「タイトル回収」がけっこう好きで、しかけられるたび「なるほどな~」と感心する。「なぜそのタイトルなのか」という謎が解ける快感なのか、コンテンツ内容とタイトルのマッチングの妙に感動しているのかは自分でもよくわからな…

検索と名づけの話

検索汚染 10年ほど昔の話だが、「マスドライバー」という単語を調べたくて、インターネットで検索してなかなか目当ての情報が出なくて困ったという体験がある。ちなみにマスドライバーというのは宇宙に物資を打ち上げる手法のひとつで、自身に積んだ燃料を燃…

作家読みの話

作家読み どの本を読むかを決めるとき、ぼくは基本的に「作家読み」をする。要は「前読んでよかった作者」の名前を覚えておいて、その人が新刊を出していたら読んでみる、「前の作品がおもしろかったなら、その人の次の作品も面白かろう」という考えに基づい…

フィルムの中の生き物の話

フィルムの中の生き物 カメラにしか映らない生物というのがいくらかいて、代表的なのがパノラマネコ(長)、パノラマネコ(短)、スカイフィッシュなどである。 パノラマネコ(長)。出所不明ながら有名な写真。long catではない パノラマネコ(短)。Google…

なぞなぞの話

クソなぞなぞ Q&Aクソなぞなぞ(ぼく命名)というある種の定型のダジャレをつくるのをちょっと昔からやっている。こんな感じだ。 Q. 開始地点に適してるよA. イースター島— ぺとり皿 (@xcloche) 2019年4月6日 説明するまでもないがいちおう説明すると、これ…

ループする因果:「ドロステのはてで僕ら」

ドロステのはてで僕ら 先日、映画「ドロステのはてで僕ら」を観た。これが非常におもしろかった。 www.europe-kikaku.com 雑居ビルにあるカフェで起こった、SFめいた事象。 テレビとテレビが「時間的ハウリング」を引き起こし、2分前と2分後がつながった。…

アニメと主観:3D世界から2Dアニメ世界への射影について

アニメーションと2つの口 先日、アニメの口の表現に関するツイートが流れてきた。 最近アニメのこの口の表現が、最も日本人に受け入れられたキュビズムだと目しているんだけど、詳しい人の解説を聞きたいとずっと思ってる。 pic.twitter.com/ugNs81yimZ— PS…

町議会99回選挙バグ:ルールと裏ワザ

町議会99回選挙バグ 2018年に与那国島の町議会で行われた議長選挙では、議長を選ぶのになんと99回の選挙を要した。しかも与党議員は全員野党の候補に、野党の議員は全員与党の候補に票を入れたのだという。結果それぞれの党の候補(反対の党から投票されてい…

「息吹」と『エンジン・サマー』とボイジャーの旅

はじめに 2019年12月4日、満を持してテッド・チャンの第二短編集『息吹』が発売された。今回は「物語が語られるということ」を焦点に、周辺の作品や情報を追いながら表題作の短編「息吹」を読み解いていきたい。 「息吹」の基本情報 息吹作者:テッド・チャン…

非対称性の感染:魚の右利き左利き

魚の右利き左利き 魚にも実は右利きのやつと左利きのやつがいるらしい。 web.archive.org 人間と違って手がない魚の利き方向というのは 口を開いたときに、下顎がまっすぐ下に開くのではなく、必ず右か左に曲がって開きます。 で定義されていて、下あごが右…

世界の階層性とフラクタル:『プラネタリウムの外側』

再帰構造をもつゲーム 最近、ツイッターでなにやらおもしろげなゲームの映像が流れてきた。 Excited to show off the other "main mechanic" of my game!Patrick's Parabox is a puzzle game about boxes, pushing boxes, and Patrick's Parabox.#screenshot…

アニメの中の視点:一人称アニメの世界

一人称アニメ 多くのアニメでは、キャラクターたちが動いているのを三人称的な視点から俯瞰する、という形で画が作られている。時には演出として「ある人物の視点から見た光景」がシーンとして用いられることもあるが、一時的なものだ。 今回は、一人称視点…

オーダーメイド本棚のすすめ

オーダーメイドの本棚を使っている。棚間隔や奥行きなどのサイズを業者に送って、希望通りの大きさに仕立ててもらった本棚である。これがなかなかに快適だ。今回は、本棚をオーダーメイドするとこんなにいいことあるよという話をする。 まずは後ろが見えない…

玉虫色の視点:「非」同一な世界を共有すること

VR

「1パーセントの仮想」 先日、ヨツミフレーム@y23586氏が開催したVRChat内のメディアアート展覧会「1%の仮想」に(VRで)行った。 展覧会自体は、VRけん玉や、空中に書けるペン、折り手順をすっとばして展開図から完成品に直接シームレスに変形する折り紙、V…

人間乱数についての覚え書き

人間乱数 人間に「乱数列を書いてください」と頼むとけっこう変な偏りをもった数列を書いちゃうらしくて、人間乱数とか human random number generation とか呼ばれているようである。これがなかなかにおもしろい。 今回は、人間乱数の性質や成り立ち、その…

メディア依存コンテンツと、Vtuberのフロンティア

VR

メディアとコンテンツ 私はKindleとiPadを持っていて、紙の書籍しかない・紙のほうが安い・電子版が出るのを待ちきれない・とにかく物理書籍がほしい〜!!! と思うとき以外はだいたい電子で本を買う。最終的な割合は半々くらいになる。 これまでの記事でも…

serial experiments:断片化した物語の可能性

物語の順序 映画やドラマ、小説などの物語には「見る順番」「読む順番」がだいたい決まっていて、ふつうはその順番に従うのが一番楽しいようなつくりになっている。だいたい、一話の後に二話を見ること、一巻のあとに二巻を読むのがよい。 たとえば推理小説…

物語を俯瞰する目:マルチプレックスのすすめ

『エンパイア・スター』読んだか? 『エンパイア・スター』というのは、1966年にアメリカのサミュエル・R・ディレイニーが書いた中編SFである。一文要約すると、辺境の惑星で暮らしていた青年がある日「エンパイア・スターという星にメッセージを届ける」使…

人が「キャラクター」になる日、キャラクターが「人」になる日

VR

VtuberとMR(Mixed Reality)ライブ 最近Vtuber(バーチャルユーチューバー)にドハマりしていて、毎日のように更新をチェックしたり生放送を聞いたりしている。大変ですね。 ……という感じでいたところに、つい先日アイドルマスターのMR(Mixed Reality)ライ…

てきとうライトノベル案内

縁うすい世界に眠っているお宝 ハーレクインって月に新刊が15冊、累計では3000冊以上出てるらしくて、ハヤカワSFがこの前2000冊記念で解説本を出してたことを考えても、これは大変な量である。 マーケットが大きければその中には名作があるにちがいない、と…

鏡の国のティーポット:仮想空間の右と左

VR

バーチャルな空間での右利きと左利きについて。 右利きと左利き 右利きと左利きの割合はだいたい9:1と言われていて、世の中のいろいろなものが気づかぬうちに右利き用にデザインされている。特に文房具には顕著で、ハサミの刃の合わせ(左手で持つと切っ…

ダジャレ全部言う(1) 500ダジャレ/秒

ダジャレをやめる あらかじめすべてのダジャレを言ってしまえば言うものがなくなるので、ダジャレをやめられると思う。 人間の力では大変なので、機械的にやる。 辞書 いきなりダジャレ全部言うのはなかなか難しいので、とりあえずステップ(1)として、単…