フィルムの中の生き物の話

フィルムの中の生き物

カメラにしか映らない生物というのがいくらかいて、代表的なのがパノラマネコ(長)、パノラマネコ(短)、スカイフィッシュなどである。

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パノラマネコ(長)。出所不明ながら有名な写真。long catではない

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パノラマネコ(短)。Googleストリートビューにうつりこんだ変なものを投稿するサイト「Google Street View World」で報告された

生息域:
パノラマネコ(長)とパノラマネコ(短)は、ネコが近くにいるときにパノラマ撮影を行うと撮像上に現れることがあることが知られている。

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スカイフィッシュ。4対の羽をもった細長い生き物が飛んでいる。

生息域:
ハエなど小さな虫が飛んでいる比較的明るい環境で、1/30秒ほどのシャッタースピードで撮影すると現れやすい。シャッタースピードの性質上、家庭用カメラで撮った動画をコマ送りで観察すると発見しやすい。

フィルム生物の発生メカニズム

お察しの通り、残念ながらこのようなおもしろげな生物はカメラの外側にはおらず、画像処理や光学的な影響の結果としてふつうの生き物がこのような変な形で撮影されている、というのが定説である。

パノラマネコは、大きな「パノラマ画像」というひとつの画像を作る際、何枚もの画像を境目が整合するよう自動的に貼り合わせていることに由来する、デジタル・フィルム生物である。
パノラマ画像の元画像を数秒かけて左から右に流して撮影するとき、ネコが同じような速度で左から右に動いていれば(横に貼り合わせていったとき、ネコが止まっていた場合よりもネコが映っている画像が多くなるので)長いネコになるし、逆に右から左に動いていれば、短いネコになる。

スカイフィッシュはアナログ時代の昔からいるアナログ・フィルム生物で、フィルム/素子の露光時間に比べて速い速度でハエなどの虫が横切ったときに発生する(モーションブラー現象)。
まず露光時間中に移動した虫の胴体が棒状の軌跡としてあらわれる。4対ほど見える翅については、虫が1/30sほどの露光時間内で何度か羽ばたく際、翅の角度によって光を強く反射するタイミングがあるために、「翅がある角度をとったとき」のみが露光の結果としてあらわれるため、このような見え方になるとのことだ。

スカイフィッシュの体長から正体を考える

ハエは毎秒200回程度羽ばたくと言われる。
カはメスよりオスのほうがちょっと回数が多くて300-600ヘルツの間くらい、らしい。(ハエや蚊が飛ぶときのブーーーーンって羽音の周波数でわかるらしい、なるほど)

虫や鳥の羽ばたき周波数と飛行速度を一覧にしたwebサイトがあった。

http://akaitori.tobiiro.jp/simpleVC_20101030161209.html
https://akaitori.tobiiro.jp/sokudo.html

ここにある数字を見ると、それぞれの虫を30fpsのカメラでとったとき、あらわれるスカイフィッシュの体長と翅が何対あるかは
体長:飛行速度(m/s) × 1/30(s)
翅の対の数:はばたき周波数(1/s) × 1/30(s)
で計算できるので

エバエスカイフィッシュ:体長6cm、翅6-7対
マルハナバチスカイフィッシュ:体長9cm、翅5対

などとなって、「その生物が生むスカイフィッシュ像」の外観がつかめる。
フィルムに映ったスカイフィッシュそれぞれについて、逆にその像を生み出した親の正体もけっこう見当がつくのではないか、などと考えた。