作家読みの話

作家読み

どの本を読むかを決めるとき、ぼくは基本的に「作家読み」をする。要は「前読んでよかった作者」の名前を覚えておいて、その人が新刊を出していたら読んでみる、「前の作品がおもしろかったなら、その人の次の作品も面白かろう」という考えに基づいた戦略だ。

書店で並んでいるのを見てビビッときた表紙のを買うという話もけっこう聞く(装丁は作品の雰囲気や傾向を反映していることが多いので、これも道理だ)し、書店で平積みされていたり賞をとっていたり、POPで面白そうなことを書いているのを買ってみる戦略も有効だろう。

「作家読み」はどうしても読むものの傾向がかなり偏ってしまうし、それだけでは新規開拓もできないので、ぼくも時にはそういう買い方をする。

さまざまな作家読み

本の話から離れると、映画やドラマ、アニメは大きなくくりではだいたい監督や演出やシリーズ構成が、各話のレベルでは脚本で「作家読み」に近いことが行われていることが多いように思う。

少し意外に思ったのが、後輩とお笑い寄りのバラエティ番組について話していたとき聞いた、バラエティにもかなりその手の傾向がある(演出・プロデューサーでノリが決まる)という視点だ。
名物プロデューサーの担当作品を一覧で見てみると、加地P(アメトーーク、ロンドンハーツ、テレビ千鳥など)、藤井健太郎P(水曜日のダウンタウン、テベ・コンヒーロ、クイズ☆正解は一年後など)など、これまで気にしたことがなかったが確かにかなり属人性の強い傾向があるように思った。

ラジオでは構成作家がかなりこの枠に近いだろうか。

さまざまな分野で、実はノリを作っている存在が一見マスクされていて、でも見ようと思えば実はトレースできるかもしれない可能性は、自分に合った作品探しの指針として留意しておきたいところだ。

レビュワー読み

今のところぼくがよくとっている「作家読み」と同じくらい成功している戦略は、自分と趣味の合うレビュワーを何人かリスティングしておき、そういった人々が「おもしろい」とレビューしていたものをチェックすることだ。

が、ここで、「趣味が合うレビュワー」をどう探すかというのはけっこう深遠な問題だ。ぼくはブックレビューサイトや通販サイト(Amazonなど)のレビュー、ツイッターなどでそういった人を探すのだが、基本的にネットにあげられるレビューというのは誉め言葉が多い。高評価の作品に大量についた好意的なレビューの大海から自分と感性のあう人を探すのはとても困難だ。

「おもしろくなかったらわざわざ言及しない」というスタンスの人もけっこういるように感じる。

ある日、発想を変えて、中~低評価のレビューに着目してみた。低評価のレビューは治安が悪いことが多く、罵詈雑言が飛び交っていたり、「商品が届くのが遅かった」といったコンテンツの内容にぜんぜん関係ないものも多い。
が、わりと「自分がこれはちょっと……と思ったポイントを、同じようにピンと来ないように感じている人」のレビューを見つけることができて、そうした人の他の本のレビューを見ると、「そうそう、その点が気に食わないんだよな~」と思うほかの中~低評価のレビューが目に入る――不思議と、そういう人のレビューはマイナス方向だけでなく高評価レビューも自分にとって芯を食ったように感じられることが多く、感性の似た人が効率的に見つけられるようになった。

というわけで、この地雷回避レビュワー読みメソッドは、作家読みと並ぶぼくの強力な本選び戦略のひとつになっている。

本や漫画の編集者は同時に強力なレビュワーでもあるので、担当作品を並べてみると「この編集者なら信頼できる!」という人も実はいるかもしれないな、と最近は思っている。