オーダーメイドの本棚を使っている。棚間隔や奥行きなどのサイズを業者に送って、希望通りの大きさに仕立ててもらった本棚である。これがなかなかに快適だ。今回は、本棚をオーダーメイドするとこんなにいいことあるよという話をする。
まずは後ろが見えない二層収納をやめろ
カラーボックスや組み立て式本棚に本を収納している人で、文庫本を手前と奥の二層にわけて入れているのをよく見る。
私はどうもこれが苦手で、「背表紙が見えない収納をするな」と思う。ぼーっと眺めて「あ、これもう一回読んでみようかな」と思って手に取る機会をつくるのが本棚の大事な役目のひとつだと思うのだ。
でも、どうしてそういう「二層収納」をしちゃうかというと、スペースがないからである。本が棚の収容可能量を上回るからそういう収納をすることになってしまうのだ。
「背表紙が見えない二層収納」の問題を解決するちょっとしたライフハックがあって、後ろの本の下に何かおいてちょっと上にズラして(下図)書名が見えるようにすると一覧性がよくなってよい、というもの。
けっこう便利なのでおすすめ
べつに本棚のオーダーメイドなんてしないぜ、という方にもぜひ覚えて帰っていただきたい。
本棚のデッドスペース(高さ)
上の方法、たしかに道理でオススメなんだけど、考えてみるとそもそも「奥の本を一段持ち上げると見えやすくなっていい」ってのは
本の上部に奥の本を持ち上げられるだけのデッドスペースがあるからそういうことができるわけである。
じつのところ、カラーボックスに限らず、多くの本棚の画像をみると本の上部に 5cm〜10cm 程度のデッドスペースがあることが非常に多い。このデッドスペースを本棚全体で足すと棚が一つ二つ増やせそうなのになあ……と思う。棚の間隔の問題でスペース不足が生まれているなら、これを解消することで、二層収納をする必要もなくなるかもしれないのである。
本棚のデッドスペース(奥行き)
本棚のデッドスペースは高さ方向だけでなく、奥行き方向にも大きなものがある。組み立て式とかの市販の本棚の多くは棚大きめの判型の本(B5判:奥行き182mm)が余裕で入ってまだ後ろが5cm程度あまるようなサイズで設計されていて、まあこれのせいで文庫の二層収納ができちゃったりするわけだけど、これに大多数の本のサイズである四六判やA5判、B6判を入れると後ろが過剰にあまる。B5の本を大量に持ってる、という人でもなければ、本棚をB5に対応させることによるスペースのロスは相当に大きい。
後ろがあまるのは「デッドスペースがある」問題以上に「並べた本を押すと後ろにズレるので、整列が崩れやすい」という美観上の問題も生み出してしまう。本棚の奥行きをだいたい本の奥行きと一致させておけば、本棚が薄くなるという効用に加え、背表紙を押すだけで同じ判型の本がきれいに整列させられる。
理想の本棚
まず上で言ったように、
- 隙間があまりないこと(デッドスペースを少なくする)
が重要。収納なんだから、高密度に並べられたほうがいい。
隙間が減らせるなら同じ量の本を収納するのに必要な棚は小さくできるので、次のことにも気配りができる。つまり、
- 圧迫感が少ないこと(低め・薄型)
部屋における本棚の存在感ってすごくて、高かったり奥行きがあったりするとすぐ部屋をせまく感じてしまうので、低めにデザインしたほうがいい。耐震を考える上でも重要である。
当然、
- 丈夫なこと
も重要で、いっぱい本をいれてたわんでいる本棚は悲惨だ。組み立て式のものは構造上たわみやすいので、きちんと棚板を釘で固定したもののほうがよい。
管理する本にあわせて設計するのも大事で、これは隙間を減らすのにもつながる話なのだが、
- 持っている本の判型にあっていること
も重要な要素だ。
ということで、希望のサイズをきめてオーダーメイドしようということになる(自然な帰結)。
価格・発注先と実際の設計
まず前提として、文庫・新書用の本棚と単行本の本棚はわけたほうがよい。なぜなら奥行きがぜんぜん違うため。
さて、実際に自分の思った寸法の本棚を発注しようとなったとき、街中に店舗を構えているような本職の家具屋さんに頼むとすごい値段になってしまう。おすすめなのは、評判のいい「サイズ違い商品」や「オーダーメイド」に対応しているハンドメイド家具業者を探すことだ。
たとえば以下のページではオーダーメイドに対応したハンドメイド家具作家が特集されているので、まず自分の希望に近い本棚を作っている人を探して、「この棚のここの間隔を20mm縮めたものを作っていただけないでしょうか……」などという形で依頼するとスムーズでいいと思う。
私は作った当時ヤフオクに出品していたAnty Craftというメーカーの、近いイメージの商品の「サイズ違い商品」という形で見積もり・発注した。
文庫棚は¥10000以下、単行本棚も¥20000程度で、希望通りのしっかりしたものができたのでたいへんよかったと思う。
文庫用本棚
まず、文庫・新書用の本棚について。
文庫は105×148mm、新書はだいたい105×173mmなので、棚間隔の内寸を180mmにするとこれらで併用できるサイズになる。これで設計してもらったのが下の本棚。
奥行きは内寸120mmにした。
本を入れたのがこんな感じ。
なんかブックオフみたいって言われて傷ついた
おおむね満足なのだが、使って思ったのが、私は新書をあまり持ってないので、新書のために高くした部分がちょっと余分だな、ということ。あと、180mmだと岩波新書よりちょっと大きいハヤカワのポケット・ブック判がギリギリ入らない。
文庫を入れる棚板と文庫/新書併用の棚板をわけて、
文庫は大きめのハヤカワトールサイズでもタテ156mmなので、文庫棚はタテ内寸180mmではなく160mmか165mmに
文庫/新書併用のほうはハヤカワミステリのポケット・ブック判(184mm)が入る190mmに
した設計で、上半分が文庫用2〜3棚、下半分が併用1〜2棚で作ってもらったほうがよかったかもしれない。
単行本用本棚
文庫本のときのちょっとした反省を活かして、単行本の本棚は上三つの棚が内寸200mm、下二つの棚が内寸220mmで設計した。今回の奥行きの内寸は160mmにしてもらった。
上半分の200mmは、よくある文芸書や漫画の判型がだいたいピッタリ入って(四六判の188mm、ポケット・ブック判の184mm、B6判や漫画単行本の182mmなど)ちょうどいいサイズである。
ブックオフではない
教科書や学術書の類に多いA5判(148mm×210mm)はちょっとサイズが大きいので、これも入れられるサイズということで220mm棚を下に二つ作った。このあたりの棚の配分は持っている本と相談して決めるといいと思う。
220mmは菊判(218mm)でもギリギリ入るように作ったつもりが、変則的なサイズでちょっとだけこれを超えるのがあった。一番下の棚だけ240mmにするなどすればよかったかもしれない。
本棚をオーダーメイドしよう
自分の持っている蔵書にあわせてデッドスペースを排した本棚を作ると、意外なほどコンパクトにまとまる。丈夫で一覧性もよく省スペースで圧迫感のないオーダーメイド本棚、おすすめ。