鏡の国のティーポット:仮想空間の右と左

バーチャルな空間での右利きと左利きについて。

右利きと左利き

 右利きと左利きの割合はだいたい9:1と言われていて、世の中のいろいろなものが気づかぬうちに右利き用にデザインされている。特に文房具には顕著で、ハサミの刃の合わせ(左手で持つと切っているところが見にくい)や、定規の目盛りの順序(左から右に線を引くと数字がわかりにくい)などの問題があるらしい。そもそも左から右への横書き自体、左手で書くと書いた文字がすぐ見えないし手にインクがつくし、大変そうである。

 左利き向け/ユニバーサルデザインのアイテムもいろいろ発売されていて、左利き向けのハサミ、左利き向けのマウス、ユニバーサルな定規、ユニバーサルなトランプなんていうものまである。トランプにどう左利きの不便があるかといえば、数字とスートが左上と右下だと左手でファンを作ったとき隠れて見えなくなってしまうとのことで、ユニバーサルなものには四隅すべてに数字とスートを書いているらしい。

 おもしろいところでは、最近「iOSのハサミの絵文字は左利き用」という話を見た。

絵文字のスクリーンショットを撮ったのがこれ。
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ティーポットの向き

 何かのきっかけで「ティーポット」で画像検索してビックリしたことがあって、下の画像を見てもらえばわかるんだけど、ほとんどのポットの写真が決まったように持ち手を右、注ぎ口を左に配置している。
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 どうも「マグカップ」や「ティーカップ」で検索しても同様の傾向があるようだ。
 おそらくこれも右利きの人が多いからで、素直にテーブルにポットを置いて正面から写真を撮るとこの構図になるんだと思う。意外なところに隠れていた左右の非対称性がを発見してメチャメチャ興奮した。

Utah Teapot

 ところで、CGの世界には「Utah Teapot」と呼ばれるメチャ有名なティーポットがある。これはCGの黎明期に作られたヴァーチャルな茶器で、マーティン・ニューウェルって人が自宅のティーポットをもとにモデリングして数値データを公開したんだけど、丸みとかくびれとか取っ手の穴とかがあって適度に複雑で、いろいろやってみるのに便利だったのでみんな使うようになったらしい。一緒にミルク入れのデータも作ったけど失われたとか、初期のモデルには底がなかったとか、逸話にも事欠かない、3DCGオブジェクト界の有名人である。便利なので、今でもいろんな3Dモデリングソフトにはじめから入っているらしい。

 んで、コンピュータグラフィックス界のティーポットがどのように撮影されるかというと、現実と同じで右側に取っ手の画像ばかり、ということには、ならない。「computer graphics teapot」で画像検索した結果が下の画像である。

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 現実界の画像が圧倒的に右側取っ手優勢だったのに対して、コンピュータグラフィックス界では取っ手の向きの左右は半々になっている。この世界ではほとんどのティーポットは宙に浮かんでいるし、仮にテーブルに置く場合も「利き手で取っ手を持って」置くわけではないため、右側に取っ手がくる蓋然性が高くなることもない。
 Utah Teapot で左右の非対称性が失われているのは、単純なオブジェクト配置のレベルのCGモデリングには身体性がないからと考えられる。この世界ではオブジェクトが体の延長にないため、「利き手」によって左右のどちらかが優遇されることがない。

 余談だが、ニューウェル自身がモデリングのために作った資料では取っ手が左側に配置されている。ニューウェルは左利きだったのだろう。
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Computer History Museumより引用 The Utah Teapot - CHM Revolution

身体性を獲得したCGの世界

 CGの黎明期や単純なオブジェクトの配置のレベルでは「オブジェクトが身体性を持たない」ため左右が同権になりえたことを上で述べた。しかし、モーションキャプチャや表情の認識によって、「身体的な」現実の動きがどんどんCGの世界に取り込まれるようになってきている。いま、左右の非対称性は、現実と同じ姿のまま、あるいは現実とはまったく真逆の姿でCGの世界に入り込んでいる。現実と鏡写しの「左利き優位」なのが、FaceRigの世界だ。

FaceRigの鏡

 FaceRigというのはSteamで買えるすごいソフトウェアで、PCのカメラで顔を撮影して、その表情を画面の中の3Dキャラクターが再現してくれるという、すごいソフトウェアである。
store.steampowered.com  ちょっと前におっさんでも画面の中で美少女になれる!というので話題になっていた。内部的には、撮影した画像から目や口の開き具合を数値として取得して、その数値に応じて3Dモデルの対応した部位を動かす、ということをやっている。
 印象的なのが、FaceRigではデフォルトのモードが鏡像になっていること。
 この仕掛けによってFaceRigはかなり鮮烈なアプリケーションになった。というのは、モニタの中で異形のキャラクターが自分と同じ表情(の鏡像反転)をしているのは、おとぎ話の魔法の鏡そのものの体験である。

 Facerigの世界では現実の体の動きに対応して画面の中の(仮想的な)体が動くわけで、この動きは物理的身体と直結している。Facerigの世界は、現実世界の左右の非対称性とちょうど「鏡写しの」非対称性を持つことになった。
 というわけで、モーションキャプチャで駆動される鏡写しのコンピュータグラフィックスの世界は、左利きが多い不思議な世界だ。

鏡の世界はどこにあるか

 とは言ったものの、上で述べたような、自分の表情を写したキャラクターと対面する「鏡」インターフェイスは少々特殊な例である。モーションキャプチャで動く仮想の体の多くはFPS視点やTPS視点で、そこに鏡像反転の関係は存在しない。身体性を獲得したところで、現実世界と同じ左右の関係が再演されるだけのことだろう。

 もし鏡像の仮想世界があるとすれば、「キャラクターの顔がこちらを向いて対面しているタイプの動画」にあらわれるはず——ちょうど最近話題のバーチャルユーチューバーがそれである。

バーチャルユーチューバーの右利き左利き

 意気揚々とバーチャルユーチューバーの利き手を確認した(ヒントが少なくて難しかった)ところ、(仮想世界での)右利きが多いようだった。左右反転してるはずだから現実では左利きのユーチューバーが多いんだね! と主張するのはちょっと無理筋だろう。

 考えられるのは、バーチャルユーチューバーが撮影に使っているインターフェイス「鏡」ではなく「カメラ」なのではないか、ということ。かれらは「鏡」で自分のパフォーマンスを確認しながら撮影しているのではなく、実写の撮影と同様に、カメラの前で演技をしているだけなのかもしれない。

 身体性の欠けた左右ニュートラルな世界や、左右が反転した鏡の世界の住人はどこかにいるのだろうか。

 CGの世界で、こいつ左右反転してるで! っぽい動きをしている人がいたら相当おもしろいので、見かけたら教えてほしい。たぶん反転していてもそこまでの違和感はなくて、ラジオ体操の左右の順番が逆だったり、何人もいる中で左利きの割合が多かったり、どこか些細な違いにあらわれるものだと思う。

追記:仮想空間で左右反転してるやつら

 と思ってたら、にじさんじ(基本的にフェイストラッキングだけでやってる新興のバーチャルユーチューバー)のキャラクターが左右反転してるらしい、との情報が入った。

 どうも画面の中で「みぎめーひだりめー」と目を動かす? のがキャラクターの左右に対応していない、ということらしいのだが、残念ながら動画の過去ログが消去されていて閲覧できないとのこと。  残念。

ダジャレ全部言う(1) 500ダジャレ/秒

ダジャレをやめる

あらかじめすべてのダジャレを言ってしまえば言うものがなくなるので、ダジャレをやめられると思う。

人間の力では大変なので、機械的にやる。

辞書

いきなりダジャレ全部言うのはなかなか難しいので、とりあえずステップ(1)として、単語レベルでまったく同じ音の、同音異義語ダジャレを全部言う。

まずは、オープンに公開されている辞書をダウンロードしてくる。 国立国語研究所が作った語種辞書『かたりぐさ』という辞書データがあって、

語種辞書『かたりぐさ』 - 言語データベースとソフトウェア

91320個の単語が登録されているらしい。一般的な大人が知ってる語彙が50000とか聞いたことがある気がするので、たぶん十分だと思う。

たとえばこの辞書で「帰る」という単語を調べると

帰る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和

と教えてくれる。左から「単語」「読み」「品詞」「活用」「和語・漢語・外国語・混成語の区分」の順。

語の区分違いダジャレ

外国語と和語で「カラメル」と「絡める」のように、「和語・漢語・外国語・混成語のどれか」の区分が違えば違う語源だろうし、音が同じで区分が違えばだいたいダジャレになると思う。二文字かぶり程度でダジャレとか言ってたら生活できないので、三文字以上の単語に限定して調べる。

同区分別品詞ダジャレ

上の四つの区分では同じグループに属していてもダジャレになる事例はあるはずで、たとえばこの辞書で「和語」でありかつ読みが「カエル」の単語を検索してみると、

かえる カエル 動詞-自立 一段 和
かえる カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和
カエる カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和
カエル カエル 名詞-一般 NaN 和
換える カエル 動詞-自立 一段 和
還る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和
帰る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和
飼える カエル 動詞-自立 一段 和
替える カエル 動詞-自立 一段 和
代える カエル 動詞-自立 一段 和
買える カエル 動詞-自立 一段 和
変える カエル 動詞-自立 一段 和
返る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和
孵る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和

というように候補がいっぱい出てくる。
同じ品詞の言葉だと似た意味が多かったり組み合わせが難しかったりしてあんまりダジャレという感じがしない。
そこで、同じ区分の同じ品詞からは代表をひとつ選んでくることにする。
この例だと、たとえば

カエル カエル 名詞-一般 NaN 和
帰る カエル 動詞-自立 五段・ラ行 和

だけを引っ張ってきて、ダジャレと思うことにする。

ダジャレ発見フローチャート

① 同じ読みの単語を抽出
② 語の区分(和・漢・外・混)をチェック

  • 語の区分が違う→ダジャレ

  • 語の区分が同じ→③へ

③ 語の品詞をチェック

  • 品詞が違う→ダジャレ

  • 品詞が同じ→非ダジャレ

これでだいたいいいと思う。

実装

pythonのpandasのデータフレームで適当にやった。重複の検出はduplicateを使った。

出力結果の統計

まず区分が違う同音異義語の数。これらのペアはほとんど全部ダジャレにできそうなものだった。

語1の区分 語2の区分 区分の異なる単語ペア数
漢語 和語 158
漢語 外国語 75
漢語 混成語 107
和語 外国語 36
和語 混成語 36
外国語 混成語 9
421

次は同区分内で別品詞の同音異義語の数。

語の区分 品詞の異なる単語ペア数
漢語 149
和語 302
外国語 5
混成語 19
475

ところが、こちらでは

一番 イチバン 副詞-一般 NaN 漢
一番 イチバン 名詞-副詞可能 NaN 漢

のような「同じ意味で別品詞のペア」がほとんどで、上で出した「カエル」のような例はあまりないようだった。漢語・外国語・混成語ではダジャレっぽいものが皆無だったので、後につづく実例には載せていない。

二種類の合計でたぶん500ダジャレくらいはできたと思う。別の同音異義語とのペア入れたら2〜3000くらいかな? 出力には1秒かからなかった。

出力結果

外国語との組がわかりやすくていいと思う。

漢語・和語

フタツ, イカン, イコウ, イタイ, イタク, イトウ, ウツウツ, オンバ, カイイ, カクカク, カコウ, カタイ, カヨウ, カンカン, ガクガク, キソウ, キノウ, キュウキュウ, キョウ, キライ, コスイ, コブシ, サカン, サクイ, サソウ, サッキ, サバク, シカク, シゲイ, シゴク, ショウ, シント, シンボウ, ジマイ, セマイ, ソウコウ, ソウロウ, ソクバク, ソット, ソロウ, タカイ, ダクダク, チカイ, チカク, チョウト, チンチン, テイタイ, デント, トウサン, トクトク, トコウ, トドク, ドウカ, ドッカ, ドント, ナンカ, ナント, ニオウ, ネツイ, ハイル, バンバン, ヒッカク, ヒロウ, フウン, フカイ, フクム, ブンブン, ボウボウ, ボツボツ, マイコ, マドウ, ムサイ, ヤサイ, ヤトウ, ユエン, ヨウシ, ヨウヤク, ヨウヨウ, ヨクヨク, ヨソウ, ヨダツ, ワカイ, ワヤク, イチゴ, ウトウ, ウンカ, カイコ, カレイ, カンバ, ガリガリ, キュウリ, キンキン, ゴカイ, サクサク, シャケ, ズキン, セイゴ, ゾクゾク, ダイダイ, チシャ, ドカン, ドジョウ, ニシン, ヒガイ, フッコ, ホッケ, ミョウガ, ズイキ, カクシ, ウカイ, イエイ, カワラ, カッパ, ヒダイ, イアイ, イシキ, ショウト, ムカイ, ユウキ, シュウト, ムコウ, ミツギ, コウバイ, コウジ, コシキ, ミツゴ, コクソ, シマイ, コウシ, コガイ, イチマツ, カイバ, ナンジ, ハヤク, ホガイ, デキアイ, コウリ, コウタイ, ブカイ, マッコウ, イキガイ, オウギ, フクロ, シナイ, ソウズ, トウジ, ドウサ, ゴトク, アイロ, ケイロ, コマイ, メイロ, ヨウチ, ヤライ, ユウヒ, ハッパ, イオウ, ホウキ

漢語・外国語

アンド, トタン, フラン, アイゼン, アンカ, アンダ, アンチ, アンプ, インカ, インチ, インキ, エイト, エンジン, ボタン, カバン, カップ, カッパ, カンパ, ゴング, クロウ, コイン, コウチン, コック, サタン, ザイン, サイド, サッシ, サンチ, サンバ, シアン, シック, シャイ, ジャッキ, ショウ, シンパ, シンク, シンポ, センチ, センス, セント, ソウダ, タイト, タイヤ, ダイス, ダッシュ, タンゴ, タンニン, タンク, チンキ, テンポ, トライ, ハイク, バイバイ, ホック, バッケン, ヒップ, ベット, マシン, マンガン, バンプ, マント, ミンチ, メイド, メイク, メンバ, ヨウド, リネン, リッチ, リンチ, リンカ, レンチ, ロップ, ワゴン, テント, レンジ

漢語・混成語

エイゴ, イイキ, カイショウ, カクイ, キオウ, キサク, クドク, サヨウ, ショウガ, シヨウ, シンコ, センナイ, タンボ, トキン, イガイ, カンパン, キンコ, サヘン, ジュンコ, ハチク, ハラン, ミショウ, ランスウ, アンジ, エンタク, ヤゴウ, ナントウ, ナンヤク, エイリ, カイヘン, カンス, カンジ, キュウバ, キョウマイ, キョウギ, ゲイコ, オンコウ, オンシャ, オショク, オンタイ, オンチ, オンテン, アイイン, アイエン, アイショウ, コウヤ, サッシ, サンピン, サンギ, コブン, カヨウ, ハイシャ, シチヤ, テッコウ, コショウ, コテイ, コモン, ジョウアイ, シンギ, シンメ, シンミ, ニオウモン, ショウアイ, ショウミ, キッスイ, キップ, ゼンバ, アイセキ, ソッコウ, ソクイ, タイロ, ダイギ, ダイス, ハヤク, ダンチ, ジアイ, ジツボ, ムシケン, チョウバ, チョウアイ, ツウジ, トウガ, トウヤ, ドウユウ, ドウギ, カイキ, カイドク, ハイチョウ, ホチュウ, ホウソ, ホンバ, メンボウ, キブツ, キヘン, メイシャ, ユウカン, ユウケイ, ユウコク, ユウショク, ユウハン, ヨウス, ヨウビ, ヨウマ, オチド, ランマ, リョウサン, ロウヤ

和語・外国語

ピーピー, イクラ, オイル, カタル, カット, カラット, カラム, カラメル, キセル, キチン, キット, クラス, クワス, コレラ, シャベル, ショウ, ジャー, タオル, タスク, テラス, ドット, ニット, バラス, バレル, パット, ピント, フラット, ホット, ホテル, ポット, マイル, メイル, メモリ, ヨーク, カッパ, チャウ

和語・混成語

カスル, コスル, トックリ, マキエ, ユスル, シラス, オシエ, カクス, ヒガシ, マダイ, キドリ, キサキ, キグミ, キツケ, キオイ, ケガキ, カタギ, コグチ, コダテ, ツナグ, カヨウ, ミズエ, アトシキ, ハヤク, チノリ, ソエジ, ドモリ, ハタチ, ヒイロ, フタメ, フジミ, フイリ, ミセル, キチン, ユドオシ, ヨクスル

外国語・混成語

ダブル, ハッスル, リント, アイス, キッス, サッシ, ダイス, メンス, キチン

ここから先は品詞違いのやつ。漢語と混成語は副詞や連体詞と名詞との一致、外国語はたぶん名詞かつ接頭辞みたいなのしか拾っていなかった。割合は低いが「カエル」「カラス」「イカン」「カシラ」「ムシロ」など、ちゃんと意味が違う品詞をイメージできる言葉があるのが見える。

和語

アタフタ, アナガチ, アマタ, アマリ, アリノママ, アレレ, アンナニ, アンマリ, イカガ, イカサマ, イカン, イズレ, イマドキ, イライラ, イロイロ, ウカウカ, ウッカリ, ウロウロ, ウンザリ, ウント, オナジ, オナジク, オノオノ, オヨソ, オヨソ, オヨビ, オンナジ, オヨビ, オハヨウ, オツカレサマ, カカル, カサカサ, カシラ, カチカチ, カチン, カラカラ, カラッキシ, ガサガサ, ガタガタ, ガックリ, ガラガラ, キタル, キョロキョロ, ギクシャク, ギュウギュウ, ギリギリ, クヨクヨ, クライ, クリクリ, グジャグジャ, グチャグチャ, グニャグニャ, グリグリ, グルリ, ケレド, ケレドモ, ココラ, コザッパリ, コックリ, コノホド, コンナ, コンナニ, ゴタゴタ, サラニ, シカシナガラ, シタタカ, シックリ, シットリ, シバラク, ショボショボ, ションボリ, シンミリ, ジャア, ジャア, ジャァ, スカスカ, スッキリ, スナワチ, ソウデスネ, ソコソコ, ソコラ, ソックリ, ソノウエ, ソノウチ, ソノタメ, ソノママ, ソモソモ, ソモソモ, ソレダケニ, ソレナリ, ソンナ, ゾッコン, タカダカ, タカダカ, タシカ, タダイマ, タッテ, タップリ, ダッテ, ダブダブ, チョット, ツイデ, ツイデ, ツトメテ, ツマリ, ツマリ, テカテカ, テラテラ, テンヤワンヤ, トコトン, トコロドコロ, トモスレバ, トモドモ, トモニ, トリワケ, トントン, ドウゾ, ドウモ, ドコロカ, ドッカ, ドンナ, ナアニ, ナカナカ, ナカンズク, ナンカ, ナンテ, ナント, ナンノソノ, ナンボ, ノビノビ, ノンビリ, ハルカ, バラバラ, ヒトタビ, ヒトマズ, ヒトリ, ヒョット, ビショビショ, ピッタリ, フックラ, フニャフニャ, ブツクサ, ブツブツ, ブヨブヨ, プカプカ, ヘナヘナ, ペコペコ, ホット, ホレボレ, ボロボロ, ボンヤリ, ポツポツ, ポロポロ, マゴマゴ, マシテヤ, マッスグ, ママナラナイ, マルマル, マルマル, ミズカラ, ムシロ, モシカ, モジャモジャ, モットモ, モットモ, モノノ, モヤモヤ, ヤットコ, ユクユク, ヨッポド, ヨワイ, ワンワン, アオイ, イカル, イキイキ, イトド, イヤー, カエル, カラス, ガクガク, ガバガバ, ギシギシ, ギスギス, クシャクシャ, ゴロゴロ, シノブ, ジワジワ, スイスイ, スガル, スレスレ, ズタズタ, タラフク, ドカン, ドキドキ, ニコニコ, ノビル, フトイ, ヨロシク, クライ, ヒトシオ, ヒトツカミ, ヒトアジ, ヒトメ, トオク, クダリ, ナントカ, ナニモカモ, ナニヨリ, ナンラ, ナニサマ, イエイエ, オオムネ, ワリアイ, イワバ, イクバク, イクラ, イクタ, イソギ, サカイ, ワズカ, チカイ, チカク, チカゴロ, クリカエシ, イヤイヤ, モトモト, ムコウ, サイワイ, ヒロビロ, イマゴロ, イマサラ, イマヒトツ, ネコソギ, イササカ, コヤス, オモイ, オモイキリ, オモイナシ, サシテ, ニヨリ, モチキリ, トキドキ, トキオリ, ツギツギ, ツギニ, ニツケ, トリアエズ, テアライ, ノロイ, ムネト, ケダシ, オモニ, ウマイ, スコシ, ノボリ, ツネヅネ, イロコイ, フルイ, イキオイ, アイニク, アオアオ, オリオリ, サキホド, アライ, アライザライ, アラカタ, ハヤク, アイカワラズ, オオク, オオカタ, オオヨソ, ナカス, ナガイ, オッテ, オッテ, ホドホド, ドロドロ, ツレヅレ, ヒゴロ, イレカワリタチカワリ, ゴトシ, イカホド, トシゴロ, スナワチ, シラス, オオイ, トビキリ, ウキウキ, ナミナミ, カタヤ, ホトンド, オヨソ, ソゾロ, マダキ, ポックリ, マノアタリ, ヨドオシ, タチマチ, サスガ, ヒヤヒヤ, タトエ, ホシイ

ダジャレがだいぶ嫌いになれてよかった。

ゲームにおける「選択肢」と時間

ゲームと「選択肢」

一般的な小説や映画が一本道のストーリーを辿るのとは違って、ゲームには道筋やゴールが複数あるもの(マルチエンディング)が数多く存在する。有名なのはドラゴンクエスト1(FC版)だろうか。ラスボスである竜王の居城にたどりついた主人公に、竜王から次のような提案が持ちかけられる。

よくきた (主人公)よ。 わしが おうのなかの おう りゅうおうだ。
わしは まっておった。 そなたのような わかものが あらわれることを…
もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを (主人公)に やろう。
どうじゃ? わしの みかたに なるか?

この提案に「いいえ」と答えるとラストバトルに突入するが、「はい」と答えると

では せかいの はんぶん やみのせかいを あたえよう!

に続くメッセージの後、画面が暗転して一切の操作が不可能になる。

ドラゴンクエスト1には、竜王を倒して到達するエンドと、やみのせかいに閉じ込められるエンド、いわゆる「グッドエンド」と「バッドエンド」があるわけで、こういった複数のエンドやルートを分岐させる起点となるのが、この「はい/いいえ」といった選択肢である。

選択肢の順向性

選択によって変わるのはふつう選択後の未来であって、基本的に「いま」何を選択しようが過去の履歴が変化することはない。これを仮に選択肢の順向性と呼ぶことにしよう。
現実における選択はすべて順向的であると言ってよさそうである。
ゲームにおいてもほとんどの選択肢は順向的であるが、中には故意か故意でないか、過去に遡及的に作用する逆向性の選択肢が存在する。次の画像を見てみよう。

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ゲーム画面より引用。

これはアイドルマスターミリオンライブ! シアターデイズのスクリーンショットである。アイドルの北沢志保が書店で絵本作家とトークショーをする、という内容のイベントで、「プロデューサーは作家の先生の本を読んできたか」との問いに対する回答として三つの選択肢が提示される。

  • もちろん全部読んだ

  • 一冊だけ読んだ

  • 俺の書いた絵本を読んでくれ!

最後の選択肢は措くとして、前ふたつの「全部読んだ」と「一冊だけ読んだ」は両立し得ないものだ。これらの選択肢を選んだ後の展開は、

  • もちろん全部読んだ→「もちろん、全部読んできたよ。トーク中に志保が困っても、助けられるようにな!」

  • 一冊だけ読んだ→「その……時間がなくて……一冊だけ……」

となっており、このプロデューサーがとんでもない大ウソつきでないなら、この選択肢から何を選んだかによって遡及的に過去が決定された、ということになる。

こうした選択肢は決して珍しいものではない。たとえば「後ろから声をかけられた。この声は……」に続く選択肢として「Aだ」「Bだ」が示され、選択後「A/Bの選択した方」との会話がはじまる、というような構造をいくつかの作品で見た気がするが、この場合も「後ろから声をかけてきたのが誰だったか」という過去が遡及的に生成されている。

先ほど示したドラゴンクエスト1は、FC版では竜王の「世界の半分をやろう」に対して「はい」を選ぶとゲームオーバーになっていたのが、SFC版からは暗転後に宿屋で目覚めるという「夢オチ」に改変された。これも「はい」を選ぶか「いいえ」を選ぶかによって「竜王との会話が夢か現実か」が遡及的に決定される、逆向性の選択肢である。(竜王を倒す方のエンドも夢だと考えると、一応の整合性はつくけどかなしいね)

特に根拠なくこの手の選択肢が現れると、因果的にそれはおかしいんじゃないの? とモヤモヤしてしまう。

逆向性の利用

逆向性の選択肢を演出として利用した作品が少ないながらあって、こういった異常な性質の選択肢が異常な状況を表現するのに一躍買っている。
この構造が巧みに用いられているのが、「Never7」である。(「Remember11」でも類似の演出が試みられている)。

Never7は2000年にKIDから発売されたアドベンチャーゲームで、離島での大学のゼミ合宿を舞台に、主人公に奇妙な出来事(デジャヴや未来視の類)が次々と降りかかる。うまくやらないと7日目を迎えることなく死んでしまうので「Never7」というタイトルがついている。

Never7」では、逆向性の選択肢のもつ演出効果の可能性として、2つの方法を示した。

ひとつは「ドッキリが行われている」ことの演出。 「今日の夕食が何か」を主人公が予想するという展開があって、「カレー」「肉じゃが」「シチュー」といった選択肢が提示されるのだが、何を選択しても「それを作るつもりだったけど、何でわかったの?」というレスポンスが帰ってくる。
この逆向性は「登場人物は何を予想されても「それを作るつもりだったけど、何でわかったの?」と返すドッキリをしていた」という解釈によって解けるわけである。

もうひとつが「世界が異常である」ことの演出。
主人公の思考が(遡及的に)世界に影響を及ぼしてしまうような物語であれば、「選択によって過去の世界が書き換わった」ことの演出として逆向性の選択肢を利用できるのである。