奇想同人音声評論誌「空耳2」準備号のお知らせ/1メートルの殻:主観化するメディアとコンテンツ

C103に出展します サークル「空耳製作委員会」より、2023年12月31日(日)に開催されるコミックマーケット(C103)東地区 ヒ-08b にて、「奇想同人音声評論誌 空耳2 準備号」を頒布予定です。 「空耳2」は現在編集中で、音声作品有識者による評論やクリエ…

想像力と嘘の月:アーカイブされた世界の時代

ギャラクシーのカメラで月を撮影すると現実よりも綺麗に写るらしい。 スペースズーム 以下の記事で、「ぼやかした月の画像をモニターに表示し、ギャラクシーのスマホで撮影すると、ぼやかしたはずなのに鮮明な月が撮影されてしまう」という実験が報告されて…

うそはうそであると見抜ける人でないと(AI生成を使うのは)難しい

ChatGPTはすごいが、人間は…… 大規模言語モデル(LLM)が盛り上がっている。 対話型のテキスト生成・ChatGPTやGPT-4ではすごいことができるんだぞ〜、というトピックで、ちょっとバズっていたツイートを2つ紹介する。 GPT-4すごい....京大の伝説の素数問題…

「大解体時代」を振り返る

このテキストは、私が反-重力連盟のSF短編アンソロジー『圏外通信2022』に書いた「「大解体時代」を振り返る」を加筆・修正したものです。 hanjuren.booth.pm でかい塔の解体によって駆動する文明の歴史 解体前史 〈塔〉の頂上は天に届いているともいわれた…

同人音声がすごいことになっている2022

「同人音声」や「音声作品」と呼ばれるメディアがある。 特殊な録音技術を使ってさも耳元で本当に囁いているかのように聞こえるのが特徴で、耳かきや散髪音などリラックスできる全年齢向け作品のほか、耳舐めをはじめとしたポルノ作品も多い。最近ではゲーム…

ミルクボーイの漫才風CM全部みる

2019年にM-1グランプリで優勝して以来、ミルクボーイを起用した漫才風CMを本当によく見るようになった。 どうも「オカンが忘れたもの」のシステムは商品紹介と相性バツグンで、笑いも入れつつ適度に情報を提示しながら宣伝するのにちょうどいい構造のようで…

Wordleの最善手をめぐる巷説と、真の答え

最近、twitterで⬜⬜みたいな謎の色付き正方形がいっぱいシェアされてくるようになりました。 Wordle 218 3/6⬜⬜⬜⬜⬜⬜⬜— 氷点下カチコチかもリバー (@xcloche) 2022年1月22日 これは「Wordle」というパズルゲームで、5文字の単語を入力して得られた手がかりから…

キレキレダンスとアニメーション

先日、アイドルマスターシンデレラガールズ・スターライトステージ(デレステ)が「涼宮ハルヒの憂鬱」とコラボし、いくつかの楽曲がゲーム内で実装され、音楽ゲームとしてプレイできるようになった。 中でもアニメのエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」の…

(小市民のための)何もしない節約術

昔、格安SIMを使ってる人は高所得者のほうが多い!という記事を読んでびっくりしたのを覚えている。 www.mdn.co.jp 今でこそ業界全体的に安くなったり三大キャリアが格安SIMの価格帯に参入したりと、格安とそうでない回線の差は近づきつつある(それでも大き…

SNSマーケティング戦略2021おぼえがき

SNSを利用した広告の戦略ってスゴくて、ここまでやるのか〜 といつも唸らされている。 ここ最近で特に感心したバズマーケティングの事例をいくつか紹介したい。 事例①:グラブルの誤字広告 summercampaign2021.granbluefantasy.jp 2021年8月1日から行われて…

頂点から消失点へ:レヴュースタァライトにおける「塔」と遠近法

塔 アニメ・少女☆歌劇 レヴュースタァライト(TVシリーズ)のシンボルは何か? といえば、いちばんに思い浮かぶのは塔だろう。「二層展開式少女歌劇」と銘打たれた*1この作品において塔は、現実世界においては東京タワーとして、作中作のレヴュー「スタァラ…

お前を消す方法 Google検索広告編

まとめ Googleのリスティング広告を消す拡張機能使ってるよ、という話 github.com イルカのカイルくん 太古のMicrosoft Officeには、画面上にイルカが常駐していて質問を入力すると答えてくれる「Office アシスタント」の機能があった。 イルカは役に立たな…

ダメ暮らし最適化の覚え書き(食べもの篇)

今回は食べものまわりをテーマに、実践している精神に負荷をかけない工夫を紹介する。 一番無理なときをマシにしよう! という発想自体は、 www.infernalbunny.com 上の記事を読んでなるほどホンマやなあと思い、意識的にいろいろ実践するようになった。 ぼ…

ダメ暮らし最適化の覚え書き(ホン篇)

最近は精神がいよいよダメになったときにマジで最低限のことしかしなくてもそこそこ成立する環境づくりをやっていて、なかなかうまい感じにできつつある。今回は全三回予定の第一弾で、本がいっぱいあるオタクがいかに本を減らすかの、〈ホン篇〉をお届けす…

錬金術師をしていた話

おおむねノンフィクションで、失敗談です。 錬金術ことはじめ 金融の世界では、相場で勝ち続ける方法のことを「聖杯」と呼ぶ。 およそ3年ほど前の話になるが、そのころのぼくは大学院の修士課程で研究をする傍ら、錬金術師をしていた。同じ境遇の多くの人に…

公共化するツイート:小さなインターネットと大きなインターネット

いつものように漫然とインターネットをしていると(漫然とインターネットをするのはよくないことである)興味深い投稿を見かけた。詳細は忘れたが物議を醸すツイートがバズっていて、発信源の投稿を開いてみるとツイートの投稿者が(比較的初期に)リツイー…

分岐する物語:「アンチ・選択肢」の試み

以前、ゲームにおける選択肢がもつ性質やある種の禁止事項について書いた。 xcloche.hateblo.jp 簡単に要約すると、この過去記事では遡及的な選択肢(その選択肢をとることで、選択肢以前に決まっていたはずのものごとが変化するような選択肢)の奇妙さにつ…

この記事にはこんなことが書かれています

面白そうなタイトルに惹かれて記事を読みにいくと、ぜんぜんそのタイトルのことを書いていない━━あるいは、タイトルの問題提起が記事内でまったく解決されていない━━そういう事例に本当によく当たって、「また騙された〜」となることが多い。 実際の内容とは…

ぼんくら大学生体験の記録

今年で都合10年ほど学生をしていた京都を去るので、大学や日常生活で体験した、ぼんくら大学生体験を記録としてまとめておこうと思う。ずいぶん昔の学部時代の話で、多少の記憶の変質による脚色はあるかもしれないが、努めて誇張抜きに書く(少し盛るに留め…

テキストベース・オタクの末路の話

誤読 すこし前に友人と話していたとき、なんの話題の流れだったか声優・上坂すみれの話が出た。口火を切ったのは友人のほうで、「うえさかすみれの〇〇が~」みたいな感じでとりとめのない内容の話がはじまった(覚えてない)のだが、このときぼくは内心焦っ…

現代地質学講義

かぐやSFコンテスト 以下の文章は、第1回かぐやSFコンテスト(「未来の学校」をテーマとしたショートショートの創作コンテスト)にコッソリ出品していた作品です。嬉しいことにHonorable Mention (選外佳作)に名前をあげていただいたようです。せっかくな…

足をぶらぶらさせること

VR

もうひとつの身長 ぼくの(リアルアバターの)身長はだいたい平均よりちょびっとだけ高いといった程度だが、ヴァーチャルな空間では130~140cm程度の低身長のアバターをよく使っている。といってもこの身長はVRChat内ではそんなに低いわけではなく、平均か、…

(セルフ)タイトル回収の話

タイトル回収 演出技法として「タイトル回収」がけっこう好きで、しかけられるたび「なるほどな~」と感心する。「なぜそのタイトルなのか」という謎が解ける快感なのか、コンテンツ内容とタイトルのマッチングの妙に感動しているのかは自分でもよくわからな…

検索と名づけの話

検索汚染 10年ほど昔の話だが、「マスドライバー」という単語を調べたくて、インターネットで検索してなかなか目当ての情報が出なくて困ったという体験がある。ちなみにマスドライバーというのは宇宙に物資を打ち上げる手法のひとつで、自身に積んだ燃料を燃…

作家読みの話

作家読み どの本を読むかを決めるとき、ぼくは基本的に「作家読み」をする。要は「前読んでよかった作者」の名前を覚えておいて、その人が新刊を出していたら読んでみる、「前の作品がおもしろかったなら、その人の次の作品も面白かろう」という考えに基づい…

フィルムの中の生き物の話

フィルムの中の生き物 カメラにしか映らない生物というのがいくらかいて、代表的なのがパノラマネコ(長)、パノラマネコ(短)、スカイフィッシュなどである。 パノラマネコ(長)。出所不明ながら有名な写真。long catではない パノラマネコ(短)。Google…

なぞなぞの話

クソなぞなぞ Q&Aクソなぞなぞ(ぼく命名)というある種の定型のダジャレをつくるのをちょっと昔からやっている。こんな感じだ。 Q. 開始地点に適してるよA. イースター島— ぺとり皿 (@xcloche) 2019年4月6日 説明するまでもないがいちおう説明すると、これ…

ループする因果:「ドロステのはてで僕ら」

ドロステのはてで僕ら 先日、映画「ドロステのはてで僕ら」を観た。これが非常におもしろかった。 www.europe-kikaku.com 雑居ビルにあるカフェで起こった、SFめいた事象。 テレビとテレビが「時間的ハウリング」を引き起こし、2分前と2分後がつながった。…

アニメと主観:3D世界から2Dアニメ世界への射影について

アニメーションと2つの口 先日、アニメの口の表現に関するツイートが流れてきた。 最近アニメのこの口の表現が、最も日本人に受け入れられたキュビズムだと目しているんだけど、詳しい人の解説を聞きたいとずっと思ってる。 pic.twitter.com/ugNs81yimZ— PS…

町議会99回選挙バグ:ルールと裏ワザ

町議会99回選挙バグ 2018年に与那国島の町議会で行われた議長選挙では、議長を選ぶのになんと99回の選挙を要した。しかも与党議員は全員野党の候補に、野党の議員は全員与党の候補に票を入れたのだという。結果それぞれの党の候補(反対の党から投票されてい…